一票の格差について

・何が問題なのか?

日本国憲法14条1項における「法の下の平等」に反すると考えられるためです。実際に、これを根拠に過去に違憲違憲状態との判決が出ています。

 

・裁判の歴史

衆議院については1972年の選挙から争われています。民主党政権が選択された2009年の選挙についても裁判が行われ、最高裁違憲状態としています。

一票の格差 - Wikipedia

 

参院選については1962年選挙から争われています。野党が躍進し自民党が下野するきっかけとなった1992年の選挙についても裁判が行われ、最高裁違憲状態判決が出ています。

 

・なぜ選挙前に言わないのか?

日本国の法体系では「被害が確定」してからしか裁判できません。

 

選挙制度をどうするのか?

それは立法府において考えられるべきことです。実際に、衆参両院について超党派の審議会において度々選挙制度の改正が行われてきました。大選挙区中選挙区・完全比例代表制など、「国民的議論」の下に抜本的な制度改正も考えられます。

 

・地方の切り捨て?

日本国憲法は「国民」が法の下で平等とされています。地方行政単位当たりの平等性のような概念はありません。この点は、日本は連邦制国家などではないため、連邦制国家等とは全く事情が異なります。例えばアメリカ合衆国は連邦制国家であるため、上院議員は州の人口に関係なく2名が割り当てられています。

もし「地域間の平等性」のような概念・権利を日本に持ち込みたいのであれば、連邦制国家などを採用するのが良いと思われます。また、ここまでラディカルでなくても、高齢化する地方をなんとかするべきだという議論はありえます。それについては、下の「個人的見解」に記しました。

 

・過疎地では1選挙区が大きくなり過ぎないか?

議員定数を増やすなどして、小選挙区1県1人(参議院であれば1県2人)を維持できると考えられます。

 

・一票の重い地域に移住すれば良いのでは?

日本国憲法では移動の自由が認められています。そして、どんな移動先においても法の下に平等に扱われる権利があります。平等に扱われるために移動の自由が制限されるのでは本末転倒です。

 

 

◆個人的見解

以下は個人的見解です。下に行くほど、より「個人的」なものになると思います。

違憲状態判決が続くことの三権分立立憲主義へのダメージ

司法が「違憲状態」という判決を出し続け、これを立法府が事後的に修正し、それがまた次の選挙では「違憲状態」と判決される。これは、司法の存在意義、三権分立を危うくするものだと思います。日本国憲法の基本精神の1つは三権分立ですが、その前に国民主権があります。そして、その国民の意思を直接体現しているのが立法府であり、三権の中でも最も権威があると思われます。それを踏まえ、司法(最高裁等)は「違憲状態」とは言っても「違憲」、つまり「選挙無効」として立法府の意思を覆すことは非常に難しいと思われます。しかしこの状態が続けば、立法が司法を軽んじている様に見えます。

また、「違憲状態」の立法と、そこで選ばれる行政で「政治」が行われることは、その「政治」が果たして憲法に照らして正当なものなのかという疑念を起こさせます。

 

衆議院格差2倍、参議院格差5倍までなら合憲という判決は非合理

数字の根拠が全くありません。もちろん、完全に1倍にすることは難しいでしょうが、現実的な国会議員数で極力1に近い数字を目指すべきでしょう。実際に、アメリカの下院などは1.01倍が目指されています。もちろん、ここまで厳格に行った場合には、選挙ごとに選挙区が変わるという不安定性という問題も生じます。

 

地方切り捨て論について

日本では一票の格差によって一票が重い地方が政治力を発揮し、地域間での所得再配分が観察されます。しかし、これは都市の低所得者から地方の高所得者への所得再配分でもあり、非常に非合理的です。所得再配分は「原則的には」個人(世帯)の所得等(資産など)を基準とすべきでしょう。また、これは「法の下の平等」という憲法の精神とも整合的です。

地方の過疎化する地方・地域をどうするかという議論は検討されるべきだと思います。特にこうした地方の県・町村は高齢化が進んでおり、財政的に苦しい所が多いと考えられます。これが問題になるのは、そうした自治体では税収が少なく、基本的なサービスを十分に提供できなくなるからです。この問題に対応するため、人口密度・高齢化率など「客観的な指標」を元に、国民が納得できる自治体のサービスが提供できる水準まで自治体に直接税金を配分するべきだと思います。公共事業等を通した所得配分は、不必要な支出を伴うため非効率です。

また、例えば健康保険・介護保険制度では、高齢化率などを基準にした財源の再配分を行うべきでしょう。現状の健康保険・介護保険制度では、逆に高齢化率の高い自治体の財政が苦しくなっており、地方が非合理に苦しむことになっています。これも「客観的な指標」に基づく政策が行われていないことが究極の原因だと思われます。